たまごの値上げが気になる

なにがあっての・・・

60年前からほとんど価格が変わっていない”物価の優等生”と言われる、「卵」!
2021年の日本の一人当たり年間消費量は、世界第2位337個だそうで、管理人も、日々朝ごはんなどでお世話になっております。

その卵が・・・

数値引用:一般社団法人日本養鶏協会(http://www.jpa.or.jp/index.html)
統計/鶏卵価格の年次別月別推移

なにがあったのかなと、Webなどを検索してみました。

報じられているおおまかな要因

テレビ報道、養鶏関係団体などのweb記事、SNSコメントなどを見るに、

〇米国の熱波による24年ぶりの干ばつ被害など、
 主な輸出国の不作により大豆やコーンといった飼料用穀物価格が上昇

〇円安や運送費高騰で日本への飼料輸入価格が上昇 

〇2022年冬~2023年にかけて、鳥インフルの猛威で過去最多の殺処分発生

養鶏場やふ化場の火災も!?卵輸出増大?~SNSのウワサ

という具合に、2022年冬からの急激値上げには、毎年需要が高まると言われる年末シーズンにかけて、いろいろお値段が上がる原因が積み重なってしまったことが大きいようです。

政府や自治体の飼料価格調整金での支えや、企業が価格転嫁しにく風潮などもあってか、

”エッグフレーション” ”エッグショック”などと言われ、価格が2年前の2倍レベルにもなってしまったというアメリカ、イギリスほどの上昇率ではないものの

ショックのあまり!?SNSなどは便乗値上げ論、食糧危機演出論なども飛び出して、なかなかの混乱ぶりですね。

鶏肉のお値段も上がり、から揚げ店なども大打撃、なんていうニュースもお見かけします。

そして管理人の近所のスーパーでは・・・

いつも買っている銘柄の卵の価格が、2022年秋~冬の間にするすると3割近く値が上がりまして、

明けて2023年、最近では卵コーナーには「入荷が不安定のため、一部銘柄は休売の可能性があります」「まとめ買いはお控えください」などの表示が。

というわけで、ざっくりわかったところで、それぞれの値上げ理由について調べてみました。

コーンなどの穀物価格が上昇!?

養鶏の飼料の輸入割合はは他の畜産業界に比べても高めで、約90%が輸入頼みなのですが、その飼料の半分ほどを占める主役の飼料用トウモロコシが値上がりしていました。

作付け面積や作況、輸出側/輸入国の政策など、余ったかと思えば争奪戦になったり、なかなか激しく動いておりますが・・・もともとウクライナ問題で混乱しているところ、2022年は主要輸出国が干ばつなどで不作だったこともあって、さらに上昇波がキツめです。

1980年以来の穀物価格はこちら↓

グラフ引用元:世界経済のネタ帳 (https://ecodb.net/about.html)
コモディティ:穀物価格の推移(年次)

確かに急上昇でした💦

円安や運送費高騰による日本への飼料輸入価格の上昇

昨年から管理人は少額ながらFXにチャレンジしているので、過去レートや、日々のレートを見張っているわけですが、

もう十何年も、110円を超えれば円安だという感覚だったはずのものが・・・
約1年前、2022年3月から本格化した円安で、10月にはドル/円レートは20年以上到達していなかった円安の極み・151円/ドルを記録してしまうまでに・・・

そしていまだに130円/ドルレベルをうろうろ💦

さらに、下図のごとく原油高騰で輸送費も上がりましたね・・・(涙目

   

チャート提供:Tradingview : https://jp.tradingview.com/
WTI原油CFDチャート2020年~2022年部分

昨年に引き続き、政府や自治体による飼料高騰のための補填が続いているとはいえ養鶏場主さんのブログなどでは、近年電気代や資材の価格も高騰しているので、やっぱり厳しいのだとか

高病原性の鳥インフルエンザ流行

2021年冬の流行が終わったと思ったら、2022年冬も高病原性鳥インフルエンザが大発生。

農水省の発表によりますと、昨年から種鶏のひなを育てる農場含め、2022年10月28日の国内1例目確認以来、2023年3月24日時点で、全国のニワトリの1割を超えるおよそ※1,645万羽が殺処分されたとのこと。
※農林水産省最新アップデート:令和4年度 鳥インフルエンザに関する情報について / 2. 国内における発生状況 (https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/220929.html#1 )

前回のまん延は2021冬~2022年5月まで続いたとのことなので、まだ増えるのかも・・・!?

うーん。昨年に続き、この影響は大きそうですね。

火災も頻発!?

SNSなどで、偶然なのか?なにかおかしいっ!?などというコメントも発生していたため、Web上のニュースを検索してみたところ、

昨年冬から今年にかけて、確かに1万羽前後の鶏舎火災が3件、卵40万個が焼けたふ化場の火災報道がありました。なるも、今やインフル打撃がすごすぎて小規模に見えてしまいますが・・・

日本養鶏協会の災害保険紹介資料によると、養鶏場火災は全国各地で毎年のように発生しているそうなので、昨年末だけ、ということでは、なかったようです。

余談ですが、火災と言えば、もう20年近く昔神戸市中心部あたりにお勤めしていた頃、消防訓練で消防士さんが、「年末の出火原因トップは放火ですっ!」と言われていて、ショックを受けた記憶が💦

あ。余談でした。

上記の養鶏場火災の原因については、特定までされている記事は見当たらなかったのですが、2013年と少し古めではあるものの株式会社食環境衛生研究所の記事によれば、原因はいろいろだが、漏電が関与していることが多いとのこと。

2020年には、和歌山のブランド鶏「うめどり」が取り扱い組合の経営悪化で飼養放棄された鶏さんが14万羽が餓死した上に放置された鶏糞から出火などという事件が起きたりもしていますので、確かにいろいろなケースがありそうです・・・

卵輸出増大?

Web上のニユース記事などから、近年香港ではTKG(たまご・かけ・ごはん・・・!の認知度が高まっており、TKG用の、日本から輸入された生卵は、円安の後押しもあって、最近人気が高まっているのだとか。

管理人も「卵4億個が香港にっ!」という記事の表記に衝撃を受けましたが

2012年には0.07万トンだったものが毎年増え続け、2021時点で2.4万トンと、年々増え続けてはいるものの、同年(2021年)鶏卵国内生産量の258.2万トンの中では、約0.9%といったところ。

超円安の昨年2022年は、人気+為替効果でさらに3割増えたそうなのですが、増えたとはいえ今のところは国内生産量の1%少し超えた感じの量だったのでした。

国産たまごの内訳や、輸入たまごの行方が気になる

スーパーでは、国産(といっても、飼料は9割近く輸入なのだそうですが💦)以外の卵を見たことがないので、十分国内生産されている気はするのですが、どれぐらいの割合で家庭用に回っているのかなと思いまして、調べてみました。

数値参照:日本養鶏協会(https://www.jpa.or.jp/)資料「鶏卵をめぐる情勢」
農林水産省(https://www.maff.go.jp/):
統計情報分野別分類/その他 ー食料需給表ー国内生産量

6割ほどが家庭用で、あとは外食や加工といった内訳でした。 

輸出をするぐらい生産しているものの、意外にも輸入卵というものもあるようでして、

グラフ化はしていないのですが、日本養鶏協会、”鶏卵の需給及び価格の動向”によりますと1998年頃からは毎年、年間約10~14万トン前後の輸入があるようです。

え?あるの?輸入たまごのパック、近所のスーパーではお見かけしたことがないのですが?と思ったのですが、

菓子パンやソーセージなどの加工用の粉卵や液卵なので、スーパーでパック詰め売りされている輸入ものたまごというものは・・・やっぱりなさそうですね。

畜産の世界的潮流はAW!?

今回値上げきっかけでいろいろ畜産業界のニュースや資料を調べたわけですが、

日本の養鶏業界は1990年頃から本格的に工業製品を作るかのような大規模化、生産流通過程の合理化の流れが進み、

その過程で鶏舎がぎゅう詰め化しがちになったり、野鳥から感染するといわれるインフルエンザの究極の対策、窓の無い”ウインドレス鶏舎”の採用推進などで、鶏さんが自然光に当たれなくなったりと、多くの鶏舎で生活環境の過酷化が進んでしまっていて、

日本では今や9割以上の養鶏場では、鶏さんは1羽あたりB5サイズほどの高密度のケージ(バタリーケージ)で飼育されている状態なのだとか。

一方、1960年代にイギリスで始まったとされる“アニマルウェルフェア(動物福祉)”(AW)の考え方が、近年SDGsの流れに乗ってさらに世界的に展開されていくのに伴い、

EU、アメリカの6州、スイス、インド、ブータンはこのような高密度のケージ飼いを禁止するまでになっていたのでした。

また、メスのみで飼われる採卵鳥については、メスの数ほどいたはずだったオスのひよこは生後間もなく殺処分という、長らく世界的慣行であった方法が

日本でも採用されていて、殺処分後、肥料や飼料の原料になることが多いという状態が続ているのですが、

AW先進国と言われる国々では、その殺処分の方法にも意識が向けられ、殺処分方法の見直しや、卵状態で判別できる方法の研究支援、殺処分しないために卵用/肉用兼用品種の開発などに取り組むという流れになっているのだとか。

日本も、過去に卵業界大手企業がAW基準緩和を求める目的で農水相に渡したとされるお金の事件で有罪判決が出るなど、

以前はなにかと大人の事情!?があったようではありますが・・・

2020年には国際獣疫事務局(OIE)の勧告に基づき農水省から動物福祉を進めるための技術指導通知が出されたり、

他AW先進国に比べるとゆっくりではあるものの、昨年2022年11月には日本の農水委員会で、採卵鳥のオス殺処分問題初議論が行われたりと、徐々に意識が高まってきているようです。

鳥好きな管理人、野生ならば鳥の赤ちゃんは、オスどころかネコやタヌキに食べ散らかされて全滅することもあるという厳しい世界ではあることも認識はしつつも・・・💦

人間の都合で、自然界ではありえない大量の人工的孵化をして生まれてくる鶏さんなので、せめて少しでも鶏さん、養鶏者さんの心身の負担が軽くなるような方向に技術進化するといいなと思っています。

まとめと感想

価格きっかけで、いろいろ調べてみたわけですが、今後はどうなるのかなと考えてみるに

夏はたまご需要が減るそうなので、鳥インフルエンザが収束し、原油価格が再上昇せず、ウクライナが落ち着いて、熱波がひどくならずアメリカ他産出国の穀物が豊作になり、とうもろこしのバイオエタノール用割り当てが増やされず、あとは為替が良きバランスに落ち着けば・・・値上げは収まるのかなー💦と勝手に思っておりますが、

はて、どうなるのでしょうか。

そして、調べていくうちに知った、動物福祉(AW)の流れ

いきなり過激な規制で、生類憐みの令だっ!卵は貴重品化するので、値段は10倍になります!なんなら、これからは完全ベジタリアン推奨っ!とはならないと思いますが、マイルドに値上げ方向に行きそうな流れではあり・・・

実情を知れば、なんだか「え~っ! 値段高いわぉっ!

とは、安易に言いづらくなってしまっている管理人。
やはりここは消費者も進化だな、ということで(`・ω・´)

とりあえず自分の生活範囲で見るかぎり、スーパーでは、平飼い(ケージ飼いではなく、歩き回れる環境)卵は55円/個前後、百貨店や養鶏所直販などの本格的放し飼い系は100円~/個というイメージなので、さすがに毎回となるとツライですが・・・

コストを抑えるため、鶏さんがビル2〜3階の高さに積み上げられた狭いケージで飼われるという、ザ・工場、といった扱いの養鶏場もある中、

ケージ飼いではあるが、できるだけストレスなく育てようとがんばっている養鶏家さんもいらっしゃるようなので、せめてできるだけ、そこは気にして買い求めていこう💦と思うのでした。